山日記

10月1日、約束していた長田さんと山へゆく

朝5時半 まずは父と一緒に椎茸を採りに林へ。
外はもう既に明るい。コジュケイ、スズメ、カラス、ハト、ニワトリ、コオロギ、スズムシ、それぞれの声が一定の音量ずつ混ざっている。向いの山からわずかに車の音が聞こえてくる。


ボコボコボコッっと音が聞こえそうなくらい大量の椎茸だ。大きさよりも傘の開き具合で収穫時かをみる。30分ほどで籠2つ分の椎茸。軽トラの二台にどんっと籠を載せたとき椎茸の強い香りがひろがった。椎茸の香りは山の香り。家に帰っていつものようにうがいをしようとしたけれど、山の香りを吸った喉は心地よくそのまま朝ご飯をたべた。

8:00
朝ご飯のあと、近所の77歳のおてんばおばあさんの長田さんと山へ。
私は先日京都で買ってきた生八ツ橋(長田さんの大好物)と今朝採ってきた椎茸の炒め物をお弁当に。長田さんは前日から仕込んで作ってくれた酒まんじゅうとお稲荷さん、お新香を持ってきてくれた。山の目的地は特に決めずとりあえず私の家庭から上へ上がる。家の裏山の山頂までは歩いて10分。


彼岸花、夏の花ワラビが生えている。


ジムグリが木の根本で息を潜めてた。



山頂には帝京大学の野球場がある。フェンスを超えて山に飛んできた野球ボールがそのまま朽ちて苔が生えて苔玉のようになってそこらじゅうに落ちている。足元にはほかにも山の栗。小粒で丸い。昔は生のままかじっておやつにしたとか。


ここから先に見える3つほどの山。記憶は定かではないが、その真ん中の山の山頂には一本。と神様の祠があると長田さんは教えてくれた。長田さんはその祠のあるところに一度だけ行ったことがあってそれは20年以上前のこと、山歩きが大好きだった今は亡き旦那さんと一緒に偶然見つけたそうだ。そこで昔、何人かの男衆が集まってばくちをして遊んでいて、集まっていたメンバーの名前が木片に刻まれていて残っていたとか。ばくちで何を賭けていたのかはわからないけれど、山の頂上であれば誰かが登ってきてもすぐわかる。というワケらしい。今その祠はどうなっているのだろうと気になり行ってみたくなった。長田さんは本当に真ん中の山だったかどうかわからないけど行ってみようといった。
球場の縁を歩いて更に森の中に入っていくと檜の林に出た。そこは今朝行った椎茸の森のすぐ向いの林だった。檜林を抜けて椎茸の林そこが山への入り口だ。

入り口から20メートルくらいは道らしき道があるけれどそこから先は川沿いを歩いたり、木漏れ日から山と山の間を探って登る。その途中休憩をし長田さんの昔話を聞いたりしながら。長田さん曰く、まともな道を行ってもいい発見はないっと。
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山道は結構急斜面で歩き方にコツがいる。大きな木の根っこや若い木の幹につかまること。よく見ないと腐ってる木をつかんでしまう。また、道のない地面を進むときは枝を切って進む。遠足の「しおり」は漢字で「枝折」と書く。それは旅の「道しるべ」の意味からきていてる。つまり枝を切って進むことは山の「道しるべ」なのだ。それは枝を切るのと似てる。

斜面を登るときたくさんの植物をみた。だけど名前がわからない。木の肌や葉っぱが見分け方を次回は勉強してこようと思う。とちゅう、いくつか動物が掘り起こしたような地面もあった。


11:30
登りはじめて3時間、ようやく山頂が見えてきた。長田さんは確信したようだった。そこが祠のある場所だって。登りきるとそこには祠はなく土台だけが残っていた。祠自体は風化してしまったのだろうか。そこから妙な時間だった。さらさらっとした空気が吹いていて天気はすごくよかった。
3時間前に長田さんから聞いていてた記憶の中の一本松がそこにはあった。1週間前の台風の為木の枝と葉っぱで埋め尽くされていたところを長田さんは泣きそうになりながらお掃除をしていた。

山へは一人では来れず私がたまたま誘ったので来ることになったのだけど、急な山道も足はすごく軽かったし、長田さんはここに呼ばれたんだっと行っていた。おいなりさん、酒まんじゅう、八ッ橋、お新香、椎茸をお供えしてから私たちはここでお昼ご飯をたべた。ヤブ蚊がずっとつきまとっていて数カ所刺されたのだけど、もしかしたら私の血液が蚊の栄養になって、蚊が山を飛び回り、山のサイクルの中で生きていくのだとしたら私の血液が山のエネルギーに少しだけなるのだろうかと思った。刺されてもあまり気にならなかった。

12:00
頂上から降りはじめる。行きとは違う方向に降りることに。その側面は太陽の光が良く当たっていてふかふかしてる。まるで生き物のようだった。一時間ほど下ると徐々に砂利混じりの地面が目立つようになった。石も川の石のように丸い。山は長い時間をかけて変化していくのだろうか。自宅ちかくの森にも『ここは以前は川だった』とかそうゆう場所があったりする。そのずっと下は道志川になっている。丸い石をポケットにいれて持って帰った。他にも拾ったもの、空き家となった山の繭玉。養蚕の白いマユと違って黄緑色かかった繭玉をつくる。
幼虫も緑色らしい。